未払残業問題

未払い残業問題(サービス残業)

近時、未払い残業問題が取り上げられるケースが目立ってきています。
厚生労働省労働基準監督課が発表した「賃金不払い残業是正の結果まとめ」では1企業あたり100万円以上の是正により割増賃金が支払われた企業は1,386企業その金額は123億円に上っています(末尾資料参照)。 今後も労働者の未払い残業に関する意識も強くなり、監督も厳しくなると思われます。

1.企業経営者の数多くの誤解
  • (1)基本給に時間外労働分も含んでいることを説明して従業員も納得している。
    残念ながら、認められません。
  • (2)営業手当を支給してカバーしている。
    残念ながら、認められません。
  • (3)年棒制なので残業手当は関係ない。
    大きな誤解で、年棒制であっても時間外手当は支払わなくてなりません。
  • (4)課長以上は必要ない。
    下記の(4)で説明しますが、認められないケースがほとんどです。
2.賃金不払い残業が指摘された場合どうなるか
  • (1)未払い残業代
    2年間遡って、通常賃金の125%を支払う義務があります。
  • (2)遅延損害金
    未払い残業代に対する利息は6%、退職後は14.6%の遅延利息がかかります。
  • (3)付加金
    裁判所が認めると、未払い残業代と同額を上限とした付加金がペナルティとして課せられます。つまり倍返しになります。
  • (4)訴訟費用等
    裁判などの係争に関して多大な時間と労力と費用がかかります。
  • (5)書類送検
    悪質なケースは検察庁に送致(いわゆる書類送検)されることがあります。
3.どういった対策が考えられるか
  • (1)定額残業代制の導入
    一定時間分の残業手当を設定して、導入する。
  • (2)事前申告制の導入
    時間外労働を行う場合に、事前申告承認制を実施する。
  • (3)変形労働時間制の導入
    1年単位の変形労働時間制や1カ月単位の変形労働時間制など、企業実態に合った制度を導入する。
  • (4)裁量労働制の導入
    業務遂行の手段方法、時間配分等を労働者の裁量にゆだねる専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制を導入する。
  • (5)事業場外みなし労働時間制の導入
    労働時間を算定しがたいときに、事業場外みなし労働時間制を適用する。
4.いわゆる「名ばかり管理職」問題

マクドナルド事件の裁判で有名になった「名ばかり管理職」の問題です。
一般には、「課長等の管理職社員には残業代は払わなくてもよい」などと考えられています。
労働基準法上の「管理監督者」は労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外になり、結果として残業代は発生しないことになりますが、しかしそう単純ではありません。 管理監督者の範囲になる行政解釈は概ね次のとおりです。

  • ①労務管理について経営者と一体の立場にある者。
  • ②部下の採用、人事考課、人事権を有しているもの
  • ③出退勤に関して、ある程度自由な裁量があること
  • ③管理職手当等給与の面でも非管理職社員に比べ、十分に上回る待遇がなされていること
以上のような、高いハードルが設けられていて、なかなか通常の会社ではクリアーできていない現状があると思います。判例はもっと厳しい判断がされる傾向にあります。 事前の対策が必要になります。

※厚生労働省労働基準局発表「賃金不払い残業是正の結果まとめ」
監督指導により支払われた割増賃金の合計額は、123億円

全国の労働基準監督署が平成25年4月から平成26年3月までの1年間に、残業に対する割増賃金が不払いになっているとして労働基準法違反で是正した事案のうち、1企業あたり100万円以上の割増賃金が支払われた事案の状況は次のとおりです。
是正企業:1,417企業(前年度比140企業増)
支払われた割増賃金合計額:123億4,198万円(同18億8,505万円の増)

支払われた割増賃金の平均額1企業当たり871万円、労働者1人当たり11万円
割増賃金を1,000万円以上支払ったのは201企業で全体の14.2%
1企業での最高支払額:4億5,861万円(その他の事業)で
ついで4億5,056万円(小売業)、3億6,671万円(飲食店)の順

ページの先頭へ戻る